一匹のハチがこの世に生をうけた。
ボラダイビングセンターのボートがお気に入りで、
人間に追い払われても、今日もまたふわりと戻ってきていた。
ボートが動き出しとき、運悪くハチは風除けのないボートの前ほうにいて、
風を全面に受けてしまうことになった。
その日は風が強く、向かい風は容赦なく彼に吹き付けた。
ハチは吹き飛ばされまいと今いるダイビングタンクの上に
渾身の力をふりしぼってひしとしがみついていた。
しばらくしてボートは桟橋につけるためようやくスピードを落とした。
助かった
ほっとしたハチはふわりとタンクの上を離れ、
もう少し安全なところで一休みしようと移動した、そのとき、
人間の靴底がハチの頭上からどしんと落ちてきた。
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「あ、踏んだ」
「え、何を」
「あの必死にしがみついてたハチ」
「え、今ここにいたんですか」
「あー、もうこれ完全にいってますよ」
「え~!かわいそおおお~」
「いや、わざとじゃないですよ」
わいのわいのわいの・・・
(その間に指でぽいと海へとはじき捨てられていた)
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